今回は、弁護士にとって定番の相談内容といえる離婚事件に役立つ実務本、『離婚事件における 家庭裁判所の判断基準と弁護士の留意点』について、特徴や評価をまとめて書評を書いていきたいと思います。
一般民事を扱う法律事務所に所属している弁護士にとって、離婚事件は何度も受任する案件になると思いますが、『離婚事件における 家庭裁判所の判断基準と弁護士の留意点』はそんな弁護士にとって非常に有益です。
後述もしますが、『離婚事件における 家庭裁判所の判断基準と弁護士の留意点』は、家庭裁判所の実務が明確に記載されていて、実務家の中でもかなり評判の高い書籍です。
本記事では『離婚事件における 家庭裁判所の判断基準と弁護士の留意点』の良い点・イマイチな点などの評判や情報を書いていきます。
一般民事や離婚事件の案件を扱う法律事務所に就職予定の司法修習生の方や若手弁護士の方にとって非常に役立つと思いますので、ぜひとも本記事の内容を参考にして頂けると嬉しいです。
Contents
『離婚事件における 家庭裁判所の判断基準と弁護士の留意点』の情報
今回紹介するのは、新日本法規出版から出版されている『離婚事件における 家庭裁判所の判断基準と弁護士の留意点』です!!
著者は、名古屋地方裁判所判事の武藤裕一氏と弁護士の野口英一郎先生です。
『離婚事件における 家庭裁判所の判断基準と弁護士の留意点』の特徴と評価
『離婚事件における 家庭裁判所の判断基準と弁護士の留意点』は、離婚事件に関する家庭裁判所の判断基準を解説している書籍です。
弁護士実務向けに、家庭裁判所が離婚事件の各争点に対してどのような考え方を採るのかを解説しています。
全体で300頁以上のボリュームであり、婚姻費用、子の引渡し・監護権、面会交流、離婚原因、親権・養育費、財産分与、慰謝料といった離婚事件における各争点事項ごとに家庭裁判所の考え方を解説しています。
名古屋地方裁判所の裁判官と弁護士の野口栄一郎先生がタッグとなり著者として離婚事件のポイントを解説しているので、非常に実務向けの本に仕上がっています。
また、離婚事件の各争点に関する解説の他にも、離婚事件の相談、受任時の対応のポイントも約60頁にもわたって解説されているので、若手弁護士にとっても非常に勉強になる書籍と言えます。
離婚事件の手続きなどの基礎知識を解説しているわけではないので、離婚調停の流れや離婚に関する基礎知識などを知りたいという方は『離婚調停』や『離婚調停・離婚訴訟』を併せて使用するのが良いと思います。
本書では、裁判官と弁護士がそれぞれの視点から実務の解説をしていて、離婚の調停における考え方、対応の仕方などを詳しく学ぶことができるので、弁護士にとって必携本と言っても過言ではないほどの良書です。
特に、裁判所の考え方を本書程に明快に記載している書籍は意外に少なく、それゆえに弁護士の先生方からの評価も非常に高い一冊になっています。
いわゆる「マチ弁」にとっては必ず購入して手元においておくべき実務本だと言えるので、もしも離婚事件を扱う弁護士でまだ読んだことが無いという人がいれば、ぜひ手に取って読んでみていただきたいです。
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『離婚事件における 家庭裁判所の判断基準と弁護士の留意点』の良いところ
最初に、『離婚事件における 家庭裁判所の判断基準と弁護士の留意点』の良いところを挙げていきます。
家庭裁判所の運用実務が明確に記載されている
『離婚事件における 家庭裁判所の判断基準と弁護士の留意点』では、裁判官と弁護士が共著となり、家庭裁判所の実務が明快に記載されているのが良い点です。
離婚事件で争点となるポイントに対して、家庭裁判所がどのような判断基準によって考えるのかという、家裁の思考過程が明確に記載されているので、非常に実務的な内容と言えます。
離婚事件の見通しを付けるために家庭裁判所がどのように判断するのかを知りたい場合には、本書を参照すれば解決するケースが多いと思いますので、手元に置いておくと安心です。
離婚事件の相談を受ける際や受任時のポイントも記載されている
離婚事件の知識や判例を解説している書籍は数多くあれども、『離婚事件における 家庭裁判所の判断基準と弁護士の留意点』のように、相談や受任時の注意点を記載している書籍は比較的珍しいです。
弁護士が離婚事件の相談・受任時に何を説明するべきなのか、受任のタイミングはいつにするべきか、DV事案や判断力が低下している事案等の注意点など、初動でのミスを避けることができる解説が掲載されています。
「法律相談票」という離婚事件の法律相談に必要となる聴取事項がまとめられている相談票の書式も掲載されていて非常に便利です。
弁護士が著者になっていて、弁護士実務の視点で役立つ内容が含まれている点が、実務本としてとても評価が高くなっている要因であると思います。
『離婚事件における 家庭裁判所の判断基準と弁護士の留意点』のイマイチなところ
つぎに、『離婚事件における 家庭裁判所の判断基準と弁護士の留意点』のイマイチなところも挙げていきます。
離婚事件の手続きの流れなど基礎知識は他から習得する必要がある
『離婚事件における 家庭裁判所の判断基準と弁護士の留意点』は、離婚事件の各争点について家庭裁判所の判断基準を解説していますが、離婚調停や訴訟の流れなど基礎的な知識から解説しているわけではありません。
まだ離婚事件を扱ったことがないという新人弁護士の方にとっては、まずは他の書籍で離婚事件の全体像を頭に入れることが優先されると思います。
そのため、これから離婚事件を本格的に取り扱っていきたいという弁護士の方は、まずは『離婚調停』や『離婚調停・離婚訴訟』を使用して離婚事件の基礎知識を習得しましょう。
その上で、本書も読むことで離婚事件に関する家庭裁判所の考え方も頭に入れることで、的確な見通しを立てること等ができるようになると思います。
条項例や書式の掲載がほぼない
『離婚事件における 家庭裁判所の判断基準と弁護士の留意点』では、弁護士が実務で使うことができる書式やひな形、和解条項などの条項例の掲載はほぼありません。
他の書籍では実務に役立つ書式やひな形が掲載されていることもよくあるので、他の書籍と併せて使用するのが便利と言えるかもしれません。
離婚事件の基礎知識を頭に入れたり、書式・ひな形を参考したい場合には『離婚調停』や『離婚調停・離婚訴訟』などの基礎本、各争点の家庭裁判所の判断基準を調べて見通しを立てたい場合には本書という形での使い分けが非常にお勧めできます。
なお、例えば、和解条項案や離婚協議書を作成する際に役に立つと思うのが『すぐに役立つ 調停等の条項例集-家事編-』や『書記官事務を中心とした和解条項に関する実証的研究』なので、条項例集を持っていないという人は、本書と一緒に購入することをおすすめします。
『離婚事件における 家庭裁判所の判断基準と弁護士の留意点』はこんな人におすすめ
・司法修習生
・一般民事や離婚事件を扱う法律事務所に就職した人
・若手弁護士
・独立志向の弁護士
本書では家庭裁判所の運用実務が記載されているので、離婚事件で家庭裁判所がどのような判断をするのか見通しを立てる際に、本書を確認することがとてもお勧めです。弁護士からの評価も非常に高く、離婚事件を扱う弁護士にとっては必携本と言っても過言ではありません。
離婚事件を受ける可能性があるという弁護士の方は、ぜひ『離婚事件における 家庭裁判所の判断基準と弁護士の留意点』を購入して手元に置いておくのをお勧めします!