こんにちは
今回は難易度高めの刑法の事例問題集『事例から刑法を考える』の書評を書いていきたいと思います。
難しめの刑法問題集を探している人はぜひ参考にしてみてください。
なお、過去の書評一覧は⬇︎こちら⬇︎にまとめていますので、ご覧ください。
【書評一覧】法律本の書評を総まとめ〜基本書・参考書・問題集・予備校本など〜
Contents
『事例から刑法を考える』 島田聡一郎・小林憲太郎著 有斐閣
今回紹介するのは有斐閣から出版されている『事例から刑法を考える 第3版 (法学教室ライブラリィ)』です。
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『事例から刑法を考える』の評価と特徴
難易度:★★★★★
試験向き:★★☆☆☆
おすすめ度:★★☆☆☆
答案例:△(ひとつの考え方として記載されているが答案の形ではない)
『事例から刑法を考える』は法学教室での連載が書籍化されたもの
元早稲田大学教授の島田聡一郎氏と立教大学教授の小林憲太郎氏の共著です。
問題数は全部で23問
問題のレベルはかなりハードだと思います。
問題というよりも解説のレベルがハードという感じですね。
解説の中心は学説の対立で、しかも、かなり細かい論点まで扱っているため刑法の知識が高くないと途中で嫌になります。
あとがきによると初版から第3版になる過程で解説を平易化したとのことですが、正直それでも難しいです。
なので基本的には上級者向けの問題集だという評価ですね。
問題は1ページから2ページくらいの問題がほとんどで、単純な問題もありますが多くはいろんな論点を組み合わせた問題になっています。
問題の内容は刑法総論も刑法各論も満遍なく出題されています。
構成としては、
問題→出題論点&関連判例→解説(判例と学説の対立)→ひとつの考え方(参考解答)→コラム
となっています。
解説は関連判例・裁判例にも触れますが、ほとんどは学説の対立について書かれていて、学説等の詳細についてコラムで補足している感じです。
『事例から刑法を考える』の良い点
・解説の最後に「ひとつの考え方」として参考解答が記載されている
各問題の解説の最後に著者による考え方の参考例が記載されています。答案ではないので予備校的な論証パターンに乗せたものではありませんが、自分が答案を書くときの流れや問題の解答として何を書けば良いのかを把握できます。学者執筆の問題集の多くは解説だけというパターンで、参考例まで書かれているのは珍しいのでその点は評価できますね。
・解説のレベルが高くて理解できるとかなり力がつく
『事例から刑法を考える』はかなり解説が難しくてレベルが高いです。なので全部の問題を解いて解説を読むのはかなり骨の折れる作業になります。それに、難しすぎて挫折する人も多いかと思います。でもそれだけにちゃんと理解することができればかなり刑法の力がつくとは思います。本書をやりこむかどうかは悩ましいところですが、刑法が得意ならしっかりと読み込むのもアリですね。
・学習の参考になる論文が紹介されている
『事例から刑法を考える』では解説やコラムの中で学習の参考となる論文が多く紹介されています。特に東京大学教授の橋爪氏の論文や本書の著者の一人である島田聡一郎氏の論文がよく紹介されています。司法試験(予備試験)等との関係で論文を読む必要があるのかという点は微妙なところですが、論文は論点についての理解を深めるのにはぴったりなので、参考として紹介されている点は良い点です。