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こんにちは。
今回は、予備試験の刑法論文問題を素材としている問題集の『実戦演習刑法』について、特徴や評価をまとめて書評を書いていきたいと思います。
予備試験の合格には、論文対策として過去問の検討がほぼ必須と言ってもいいくらいの重要性を持つのですが、本書は予備試験の刑法論文の過去問分析に役立つ内容となっています。
予備試験受験生だけでなく、司法試験受験生や法科大学院生などの方にはすごくお勧めできる問題集だと思いますので、問題集選びに悩んでいる方は是非参考にしてください。
なお、過去の書評一覧は⬇︎こちら⬇︎にまとめていますので、ご覧ください。
【書評一覧】法律本の書評を総まとめ〜基本書・参考書・問題集・予備校本など〜
Contents
『実戦演習刑法』の情報について
今回紹介するのは、弘文堂から出版されている『実戦演習刑法』です!!!
著者は獨協大学法学部教授の関根徹先生です。
『実戦演習刑法』の特徴と評価
『実戦演習刑法』は予備試験の過去問を素材とした問題集。
本書と同じ『実戦演習○○』シリーズでは、他にも『実戦演習行政法』が出版されていますが、それ以外の科目は未出版です。
関連記事:【書評】『実戦演習行政法』〜予備試験の行政法問題を素材とした問題集〜
本書では、予備試験刑法の論文問題を平成23年~30年までの合計8問扱っています。
予備試験の論文問題を解説する問題集はまだ少ないので、予備試験受験生の方には非常に有難いのではないでしょうか。
もちろん、予備試験で出題された論点が翌年以降の司法試験でも出題されることはあり得ますので、予備試験受験生だけでなく、法科大学院生や司法試験受験生にも本書で予備試験の過去問にトライしてみることをおすすめできます。
本書の構成は大きく三段階に別れていて、「基礎編→応用編→発展編」という形で区別されています。
基礎編では、構成要件の定義だったり各論点につき学説や判例の解説をしていたり、問題を解くうえで必要な刑法の知識をまとめて解説しています。
応用編では、問題文の具体的な事実から、あてはめや具体的な解答筋を示しています。応用編の最後には、参考答案例が付されています。
発展編では、問題とは直接関係しない、あるいは、関係するが少々高度で答案に反映させる必要のない刑法の知識について解説しています。
予備試験の問題について、解説を読みたいだけであれば、基礎編と応用編に目を通せば十分。発展編はプラスアルファという感じでして、余力のある人は読んでみても良いかも、程度の認識でオッケーです。
本書の解説の内容は、司法試験や予備試験の受験生にとってはかなり参考になるものとなっています。
というのも、本書の解説は(特に基礎編)要件の定義や処罰根拠等の、受験生が答案に書く必要のある文言をしっかりと書いてくれているからです。
それに、学者解説によくありがちな一つの論点について延々と議論することもあまりなく、基本的には非常に淡々と基礎知識を説明していて、重要な論点についてはしっかり解説というようにメリハリも付けられているので、解説を読んでいて負担がかなり少なく感じます。
応用編でしっかりと事実のあてはめにまで触れられているので、実際に答案を書く際にどの事実を使う必要があるのかという点も頭に入れることができます。
本書のレベルについては、予備試験の問題を扱っているので初学者にはちょっと難しいと思います。ですので、本書の対象者は中級者くらいといったところかと。
予備試験の受験を目指している方は、刑法をそれなりに学習した後に一度本書にチャレンジしてみるのがおすすめです。
『実戦演習刑法』の良いところ
ここから『実戦演習刑法』の良いところをまとめていきますので参考にしてください。
予備校の過去問(平成23~30まで)の解説本
『実戦演習刑法』の一番の特徴は、予備試験の過去問を解説した問題集ということ。
予備試験の解説本はまだ数が少なく、全然整っていない状況にあります。
そんな中で、過去8年分の予備試験論文問題を素材として問題集化している本書は、予備試験の受験をされる方にとってはかなり貴重と言えます。
司法試験では過去に出題された論点が、翌年以降も繰り返し出題されることもしばしばありますし、予備試験でも過去出題論点と重なる問題が出されてもおかしくないですね。
特に、予備試験は司法試験とは異なり出題趣旨のみが公開され、採点実感はありません。それに、出題趣旨も司法試験のように詳細に解説してくれているわけではなく、かなりあっさりした内容にとどまります。
正直、予備試験の過去問検討は出題趣旨が薄くて割と難しいと思うのですが、本書のような解説本があればその点もカバーすることができます。
予備試験の論文対策をするのであれば、ぜひとも本書を使いたいところ。
参考答案例が付いている
『実戦演習刑法』には解説とともに著者が直々に作成した参考答案例が付されています。
予備試験の参考答案を目に入れることができる点で、受験生にとってはかなり便利な問題集ではないかと。
ただ、後述しますが、本書の参考答案例は少々癖のあるものとなっています、、、
とはいえ、答案例の内容は、解説で示されたことがしっかり反映されたものとなっていますので、自分で一度問題を解いてみてから、参考答案例の解答筋と照らし合わせて検討してみると非常に勉強になるかと思います。
定義や処罰根拠を丁寧に記載
前述したように、『実戦演習刑法』の解説は、定義や処罰根拠など答案作成に必須な記述をしっかりと記載してくれています。
なので、自分が予備試験の過去問を使って答案を作成する際に参考にしながら論証を書くことができます。
もちろん、最初に答案を作成した後で、解説を読みながら確認するというのもアリ。
解説の最初には、問題で問われている論点についてざっとまとめていますので、まずはそこだけ読んでから答案を書けるかどうか試してみるみたいなやり方もアリ。
解説を読みながら自分が暗記しきれていない部分をしっかりと頭に入れることができると良いのではないかと思います。
『実戦演習刑法』のイマイチなところ
ここからは『実戦演習刑法』のイマイチなところを記載しますので参考にしてください。
参考答案例が独特な書き方になっている
多くの司法試験・予備試験受験生は論文答案を書く際に、「規範→あてはめ→結論」という流れに則って論述していきます。
一方で、本書の参考答案例ではあてはめと規範が融合して書かれているのが随所で見られます。
もちろん、大論点にならないような部分(例えば住居侵入罪とか多いです)では、わざわざ三段論法の形で「規範→あてはめ→結論」という流れにせず、三段論法を多少崩してあてはめと規範をまとめて書くことはあります。
でも、それは論文試験でサブ論点にもならないようなところだからこそ、全体の時間の関係上省略形で答案を書いても問題ないということです。
本書の参考答案例では、問題の中で結構重要だと思われるメイン論点についても、三段論法を崩した形式で書かれることが多いので、そのような形式面は(個人的には)司法試験や予備試験を受験される方は参考にしないほうが良いのかなと思うところ。
ただ、答案の内容はもちろん参考になりますし、要件の定義や判例の規範もちゃんと書かれてはいますので、自分なりに司法試験や予備試験向きの答案形式に変えてみると非常に役立つと思います。
取り扱い問題数が少なく、論点の網羅性には欠ける
『実戦演習刑法』は予備試験の論文問題を素材とした問題集ですので、問題数が過去の予備試験の問題に限られてしまいます。
合計8問のみ。
当然ながら、過去の予備試験問題だけでは、刑法の数多く存在する論点を網羅することはできません。
なので、司法試験や予備試験のために本書を利用する際には、あくまで予備試験の過去問の解説本であって網羅的に知識をインプットするものではないことを頭に入れておきましょう。
本書で腕試し的に予備試験の問題に挑戦し、不足する部分は他の論文問題集や予備校の問題演習講座(例えば、アガルートアカデミーの『重要問題習得講座』など)等で知識の補完をするのが良いですね。
ちなみに、下記の記事では司法試験合格者の私が受講していた予備校講座についてまとめていますので、読んで頂けると予備校講座選びに役立つと思います。
関連記事:司法試験一発合格者が実際に受講していた予備校講座を大紹介〜おすすめも併せて紹介〜
あと私が司法試験の受験のために使用した問題集や参考書等を下記の記事でまとめていますので、そちらもあわせて読んでいただくと参考になるかと思います。
関連記事:【公開】司法試験の一発合格者が実際に使用していた基本書・参考書・問題集まとめ
『実戦演習刑法』はこんな人におすすめ
・司法試験、予備試験の受験を考えている人
・法科大学院生
・ロー入試を控えている人
・参考答案例付の問題集を探している人
予備試験合格のために必要となる、論文過去問分析。『実戦演習刑法』は予備試験の過去問検討を行う際に非常に参考となる解説本だと思います。参考答案例を参照しながら、自分の答案を見直すことができます。予備試験の受験を目指している方は、是非一度読んでみることをオススメいたします。