書評(刑事訴訟法)

【書評】『エクササイズ刑事訴訟法』〜薄くて周回向きの演習書〜

(この記事はプロモーションを含みます。)

こんにちは

今回は、『エクササイズ刑事訴訟法』について特徴や評価を書いていきたいと思います。

刑事訴訟法の問題集に悩んでいる人は是非参考にしてみてください!

なお、過去の書評一覧は⬇︎こちら⬇︎にまとめていますので、ご覧ください。
【書評一覧】法律本の書評を総まとめ〜基本書・参考書・問題集・予備校本など〜



Contents

『エクササイズ刑事訴訟法』 粟田 知穂著 有斐閣

今回紹介するのは『エクササイズ刑事訴訟法』です。

粟田 知穂 有斐閣 2016-03-02
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by ヨメレバ

 

著者は検察出身の慶應義塾大学法科大学院教授、粟田 知穂氏です。

『エクササイズ刑事訴訟法』の特徴

1.エクササイズ刑事訴訟法の構成について

『エクササイズ刑事訴訟法』では全16問出題されていて、最初に問題文だけがズラッと並んで出されています。

 

そしてその後に解説編として、16問それぞれの問題について解説が1問ずつ書かれています。

 

よく法律系問題集であるような一問ごとに解説が付いているパターンではなくて、問題部分と解説部分で完全に分けられています。

 

普通は一問ずつ解いていくので、その点からすると行ったり来たりしないといけないからめんどくさいというのは否めないが、すぐに慣れるし薄いからそこまで大変な作業というわけでもありません。

問題パートと解説パートが完全に区別されているという構成に関しては一長一短という感じで、そんなに気にするほどでもないですね。

2.エクササイズ刑事訴訟法の難易度について

『エクササイズ刑事訴訟法』の問題の特徴は長文の事例問題という点にあります。

長さでいうと大体2ページから3ページくらいが丸々事例問題となっている感じになっています。

でも問題文がすごく長いというのはありますが、出題論点はほとんど基本的なものだし、問題も長い割にはそこまで複雑なものではないので、事例問題の難易度自体は中の中〜中の上くらいだと思います。

 

長文問題に慣れていないと疲れるかもしれませんが、司法試験の刑事訴訟法はとても長い問題が出されるということを考えると、長文問題に慣れるという意味ではちょうどいい問題集だと思います。

3.エクササイズ刑事訴訟法の解説について

エクササイズ刑事訴訟法の解説は、とてもコンパクトかつ必要最小限、という感じです。

解説のほとんどは、判例を中心にして問題文への当てはめを書いているという形になっています。

学説や判例の対立がある論点についても、判例を紹介してさらっと学説も触れるだけ、という感じですごくシンプルに解説をしています。

事例演習刑事訴訟法 第2版 (法学教室ライブラリィ)』のような深い議論や高度な解説を期待している人にとっては、本書の解説はあっさりしすぎていて拍子抜けするかもしれません。

でも、とにかく問題を解きたい、という人は本書くらいコンパクトに解説してある方が、何回も何回も問題を解くことができるのでいいかもしれません。

あと、本書の解説の特徴として、当てはめ重視、という点もあります。

学説の言及は少量に留められているのに対して、問題文への当てはめの解説についてはある程度具体的に書かれています。

問題文が長いこともあって使える事実関係も多いので、どんな事実が重要なのか、規範の当てはめとしてどの事情を考慮していくのか、という点に関しては詳細に書かれているので、その点では司法試験向けの本といえます。

『エクササイズ刑事訴訟法』の良い点

事例問題への「慣れ」を養える

司法試験でも予備試験でも、最近の刑事訴訟法の論文試験は総じて事例問題が出題されます。そんな中で、事例問題へのアプローチを学ぶことができる演習書として『エクササイズ刑事訴訟法』はかなり優れたものと評価できます。当てはめで使える事実までしっかりと書いてくれているので、コンパクトな解説でも十分答案作成の役に立ちます。事例問題への対応力をつけるためには、本書のような問題集を何回も解いていくのが良いでしょう。

薄くて何周も回せる演習書

法律系の演習書(特に学者執筆)は解説が深くて「そんなことまで考えないといけないのか?!」といったことまで議論しているものもあります。それに比べて本書の解説は基本的な知識や重要判例・学説の紹介という程度に留められているので、全問題を消化するのにそれほど時間を食うことがありません。効率よくアウトプットの力を鍛える問題集としてかなり有用だと思います。

『エクササイズ刑事訴訟法』のイマイチな点

問題数が少なめ

『エクササイズ刑事訴訟法』は問題文が長いとはいっても、全16問でかなり問題数自体は少ないです。なので、どうしてもあらゆる論点を網羅しているわけではないので、たくさんの論点を消化したい人は『事例研究』など、他の問題集も解いていく必要があります。

刑事訴訟法の深い理解には不十分

これまでに書いてきましたが、本書の解説はかなりコンパクトであまり細かい学説の対立等には触れていません。なので、刑事訴訟法の議論を深くまで知りたいという人や、試験対策よりも学問的興味のある人は本書だと物足りないと感じるでしょう。

『エクササイズ刑事訴訟法』の使い方

『エクササイズ刑事訴訟法』を使うのであれば、刑事訴訟法を一通り勉強したという人が刑事訴訟法の事例問題に慣れるために使うのが良いです。

 

特に司法試験を受験予定の人は、司法試験の刑事訴訟法の問題がかなりの長文なので、長文問題に慣れるという点でも、時間を図りながら本書の問題の答案を作成してみるといいでしょう。

 

もちろん、自主ゼミで使う用の問題集としてもオススメできます。

 

あとは薄くてコンパクトな解説という点を活かして、試験直前の総復習としてザッと読むというのもアリですね。

 

全体に目を通して基本事項を確認するだけなら、数時間で全部読むことができるので、ガッツリ勉強するのではなく基本知識等の確認用問題集としてもオススメです。

 

エクササイズ刑事訴訟法では簡単な解説しかされていないので、深い議論まで知りたい人は、エクササイズ刑事訴訟法の解説に付いている参照文献(『刑事訴訟法』通称:酒巻本など)にあたるといいですよ。

 

こんな人におすすめ

・刑事訴訟法を一通り勉強した人
・試験直前に刑事訴訟法の問題をザッと復習したい人
・長文問題を解きたい人
・自主ゼミで解く問題集に困っている人

・何周も周回できる演習書を探している人

司法試験受験生や合格した人の中でも『エクササイズ刑事訴訟法』を使っている人は多いですし、かなり優れた演習書なので、購入を迷っているのなら絶対に買った方がいいと思いますよ!!
購入して損することはないです!!

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