書評(憲法)

【書評】『基本憲法I基本的人権』〜憲法事例問題を解くための基本書〜

(この記事はプロモーションを含みます。)

こんにちは

今回は、憲法事例問題対策にぴったりな基本書、『基本憲法I基本的人権』の特徴や評価について書いていきたいと思います。

憲法の基本書に迷っている人はぜひ参考にしてみてください!

なお、過去の書評一覧は⬇︎こちら⬇︎にまとめていますので、ご覧ください。
【書評一覧】法律本の書評を総まとめ〜基本書・参考書・問題集・予備校本など〜



Contents

『基本憲法I基本的人権』 木下智史=伊藤健著 日本評論社

今回紹介するのは『基本憲法I基本的人権』です。

木下 智史,伊藤 建 日本評論社 2017-02-17
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『基本憲法I基本的人権』の特徴と評価

『基本憲法』は『基本刑法I―総論[第2版]』『基本刑法II 各論 第2版』『基本行政法 第3版』に次いで出版された基本シリーズの法律書です。
⬇︎『基本刑法』と『基本行政法』はレビューを書いています⬇︎
【書評】おすすめな刑法の基本書〜『基本刑法I―総論』『基本刑法II—各論』〜
【書評】『基本行政法』〜行政法の試験対策向けのおすすめ基本書〜

 

基本シリーズの特徴として、コンパクトな解説、論文試験を意識した作り、判例中心の内容、というのがありますが、『基本憲法』も例に漏れず司法試験等の論文試験向きの書籍という印象です。

 

「憲法事例問題を解くために最も実践的なテキスト」という謳い文句なだけあって、内容はかなり司法試験等の憲法事例問題を意識したものになっています。

 

特に、各章の最後に演習問題として短めの事例問題が設定されているところや、最後の章が「憲法事例問題の解法」について書かれていて論文試験の答案のイメージを持たせようとしているところなどは、司法試験等の法律資格試験を受験する人に役立つように考慮されていることの表れと言えます。

 

憲法の基本書としては『憲法 第六版』(通称:芦部憲法)や『憲法学読本 第2版』が定番だと思いますが、両者は学術的なもので試験向きのテキストというわけではないので、法律系試験受験生には『基本憲法』の方が合うかもしれません。

 

内容は基本的人権に特化しています。
憲法の論文試験では基本的に人権分野から事例問題が出題されることがほとんどです。
なので、基本的人権を中心に構成されている『基本憲法』は司法試験等の受験生にとって有益な書籍です。

 

著者が関西大学大学院法務研究科教授の木下智史氏と受験界で大人気の弁護士伊藤建氏の共著になっています。
学者と実務家がコラボして作られているという珍しい書籍になっています。
学者の豊富な知識に実務家による試験向けの解説が組み合わせる点を特徴としているとも言えますね。

 

ちなみに、木下智史氏は『事例研究 憲法 第2版』の著者で、伊藤建氏は『受験新報』で「憲法の流儀」という記事を連載していました。
両方とも憲法試験に有益なものなので是非チェックしてみてください。

 

『基本憲法I基本的人権』の良い点

論文試験向きの内容、作りになっている
憲法の基本書には珍しく、論文問題を意識した内容、構成になっています。他の基本書では憲法の知識は身に付けられても、答案のイメージが全く持てません。本書は憲法事例問題の解法という章を設けていたり、事例問題を載せていたり、著者の一人が実務家だったりと、受験生が論文試験を受ける際に役立つような配慮がとてもなされています。なので、受験生が使用する憲法の基本書としてはかなり向いたものとなっていると言えます。

 

判例中心の解説
論文試験で必須になるのが判例知識なのですが、本書は判例の重要部分をたくさん引用していて、いろんな判例の内容を比べながら学習することができるようになっています。特に、試験直前になると判例を総ざらいすることになると思うので、短時間で重要判例を確認するという使い方でも役に立ちます。また、短答の判例問題対策としても使用できる点も優れたところです。

 

『基本憲法I基本的人権』のイマイチな点

主張反論型の答案のためには不十分
本書は判例中心という点ではかなり勉強しやすい作りになっているのですが、司法試験は主張反論型の問題形式になっているので、本書だけでは何を反論として書くべきかなど、いろんな立場からの答案を書く場合には本書だけでは不十分と言えます。学者の基本書や『憲法 解釈論の応用と展開 [第2版] (法セミLAW CLASSシリーズ)』などの参考書、『判例から考える憲法』などの問題集を使って何を原告で主張して、何を被告の反論として書くべきかということについても考えていく必要があります。

 

具体的な答案の書き方は演習書から学ぶ必要
『基本憲法』はあくまで基本書であって、問題集や論証集のように答案の形を具体的に知ることはできません。なので、答案の書き方を身につけるためには答案付きの演習書などを使って、答案の形を知らなければ答案を書くことができません。『基本憲法』の他にも『憲法演習ノート』や『憲法の急所──権利論を組み立てる 第2版』など演習書を使って答案を書く力を鍛えましょう。

 

深みのある議論は記述されていない

 

憲法は条文の記述が抽象的なので、議論も難解になりがちです。判例と学説の考え方が対立していたり、学説間でも少し違う見解だったりと議論がややこしい傾向にあります。しかし、『基本憲法』の記述はかなり完結にまとめられているので、少し深みのある議論にかけると思われる部分もあります。初学者や受験生にはそこまでデメリットではないかもしれませんが、憲法の試験問題は割と深い議論をさせることも多いので、これまで紹介してきた基本書や参考書、演習書を使って補完しましょう。

 

こんな人におすすめ

・論文試験向きの基本書を探している人
・判例中心の基本書を読みたい人
・憲法事例問題のイメージを掴みたい人
・「基本」シリーズが好きな人

・伊藤建ファン(人気なので笑)

その他の書評一覧は⬇︎こちら⬇︎にまとめていますので、ご覧ください。
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