書評(刑法)

【書評】『刑法総論の悩みどころ』(橋爪隆著)〜判例・学説の議論整理に最適な参考書〜

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今回は、刑法総論の参考書の中でも個人的にはかなりおすすめできる書籍、『刑法総論の悩みどころ』について、特徴や評価をまとめて書評を書いていきたいと思います。

この記事を書いている私は司法試験の一発合格者なのですが、『刑法総論の悩みどころ』はそんな私の愛読書と言っても過言ではないくらいに何回も読み回した参考書です。

受験期当時にはまだ書籍化されておらず、『法学教室』という法学雑誌に連載論文として掲載されていました。

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わざわざ『法学教室』を購読してまで『刑法総論の悩みどころ』を読んでいたのですが、その甲斐あってか、司法試験では刑法でなかなかに好成績を取ることができました。

そんな私の感想を踏まえつつ、この記事では『刑法総論の悩みどころ』の良い点・イマイチな点などの情報を書いていきます。

将来的に司法試験や予備試験の受験を考えている人には、ぜひとも参考書選びの参考にして頂けると嬉しいです。

Contents

『刑法総論の悩みどころ』の情報

今回紹介するのは、有斐閣から出版されている『刑法総論の悩みどころ』です!!

著者は、東京大学大学院教授の橋爪隆先生です。

『刑法総論の悩みどころ』の特徴と評価

冒頭でも少し触れましたが、『刑法総論の悩みどころ』は『法学教室』で連載されていた論文が満を持して書籍化されたものです。

因果関係や正当防衛等、司法試験や予備試験の刑法総論分野の中でも出題の多い重要論点を解説している論点解説系の参考書

司法試験や予備試験の受験生が刑法総論の学習で躓くことの多いテーマを扱っているので、試験のための知識強化に非常に役立ちます。

本書の解説は、各論点の主要判例を整理しながら判例の考え方や主要学説の立場等の議論状況をまとめ、最後には橋爪先生自身の見解を述べる形式で進みます。

非常に詳細な議論整理が特徴的なところです。

事例や判例を基軸として具体例をもって解説しているため、応用論点を扱っている部分でも難しいと感じることはそれほどなく、比較的読みやすい解説書になっている印象。

また、解説で触れられる判例は、最高裁判例に限られず、高裁・地裁の裁判例も豊富に取り上げているので、本書を読むだけでも刑法総論の判例知識をかなり補強することができます

弁護士志望A
(司法試験合格者)
弁護士志望A
(司法試験合格者)
私は、司法試験受験生のころに『法学教室』を購読して連載論文の「刑法総論の悩みどころ」を読んでいました。私が刑法を得意科目にできたのは、「刑法総論の悩みどころ」の解説を読み込んで刑法の学説・判例知識を頭に叩き込んだことが要因だと感じています。本書は分量も多く、ちょっとハードではありますが、個人的には刑法で悩んだら真っ先に参照することをおすすめしたいくらい良書ですので、気になる方は一度目を通してみると良いかもしれません。

『刑法総論の悩みどころ』の良いところ

ここから刑法総論の悩みどころ』の良いところを挙げていきます。

 

司法試験・予備試験で頻出の論点を深掘り解説

刑法総論の悩みどころ』で一番目を引く点は、司法試験・予備試験の頻出論点を扱っていることと、最新の学説の議論状況や判例の展開を踏まえた論理的な解説です。

司法試験の刑法論文では、過去に出題された論点が再出題されることもよくあるため、頻出論点をいかに理解出来ているのかという点が強く求められる傾向にあると言えます。

また、近年の司法試験の刑法論文では、判例の立場の他に学説の理解を問うような出題がなされています。

例えば、令和元年司法試験の刑法論文。第2問で、承継的共同正犯について複数の見解を述べされる問題が出題されています。

司法試験や予備試験の合格のために、判例知識の理解が不可欠であるのは変わりませんが、学説の理解まで含めて論点理解を充実させることが求められる傾向にあるというわけです。

このような点からすると、判例の説明にとどまらず、最新の学説の議論状況まで解説している本書は、司法試験の論文対策として役立つ面が強いものと思われます。

 

判例を豊富に扱った丁寧な解説

刑法総論の悩みどころ』では、刑法総論の重要論点の解説の中で、判例を豊富に扱って議論を整理しています。

学者執筆の参考書の中には、判例よりも自説の紹介に力を入れているものもありますが、本書はそのようなことなく、判例を中心とした議論展開となっています。

判例と整合する形で橋爪先生の自説を展開している部分もあり、判例中心の思考は司法試験や予備試験においても使えるものです。

本書の判例や事例を交えた丁寧な解説は、事例問題の出題される司法試験・予備試験の学習にとって非常に有益な内容と評価できますね。

また、判例を多く取り扱っている点は、判例知識の量がものを言うといっても過言ではない短答試験にも役立つ側面は大いにあると感じます。

 

『刑法総論の悩みどころ』のイマイチなところ

ここからは逆に、刑法総論の悩みどころ』のイマイチなところも挙げていきます。

 

500頁弱のボリュームで負担が大きい

刑法総論の悩みどころ』は、合計500頁近いボリュームを誇っており、重要論点のみの解説を行っている書籍としては比較的厚めの参考書となっています。

限られた時間の中で複数の科目を学習しなければならない司法試験・予備試験受験生にとっては、読み込むには負担が大きいと感じる面も否めません

本書の使用方法としては、刑法総論の論点の中で、自分の苦手な部分や理解を深めたいところを中心的に読んでいくのが良いかもしれません。

 

答案作成等に使用するにはひと工夫必要

刑法総論の悩みどころ』は、司法試験や予備試験の刑法で役に立つ部分が多いとはいうものの、やはり試験対策用に作成された書籍ではないので、試験の結果に直結するようなものではありません

例えば、論文試験の答案作成に役立たせようと考えるならば、橋爪先生の解説の中で規範の理由づけに使える部分を抜き出すなど、少し工夫が必要かもしれません。

判例や学説知識を理解する意味においては非常に心強い参考書ではあるのですが、本書の内容を自分の試験対策(答案作成等)に如何に流用するのかという点は個々人の使い方次第というところです。

予備校出版の論証集等では不足してしまう(答案として薄くなってしまう)点をカバーするために、本書の内容を盛り込んだ論証を自分で作ってみるというのもアリだと思います。

 

『刑法総論の悩みどころ』はこんな人におすすめ

・司法試験受験生
・予備試験受験生
・法科大学院生
・刑法を得意科目にしたい人
・刑法総論の重要論点の理解に悩んでいる人

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