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司法試験の選択科目は、民法や憲法といった主要法律科目と比較して、参考書等の教材が少ないです。
司法試験に一発で合格できた私自身、受験期には労働法の参考書選びに悩んだことがありました。
おそらく、司法試験受験を考えている人の中で、労働法の教材選びに悩んでいる人も多いのではないかと思います。
というわけで、今回は、司法試験受験生の中から非常に人気もあり、合格者の私もおすすめの労働法の参考書、『1冊だけで労働法』を紹介していきたいと思います。
特徴や評価を記載していきますので、労働法選択で司法試験の受験を考えている人は、ぜひ参考にしてください。
※労働法のおすすめの基本書や問題集などの教材一覧は下記の記事にまとめていますので、そちらも参考にして頂けると幸いです。
関連記事:【司法試験一発合格者が厳選】労働法のおすすめ基本書・参考書・問題集・予備校講座
Contents
『1冊だけで労働法』の情報
今回紹介するのは、辰巳法律研究所が出版している『1冊だけで労働法』です!!
『1冊だけで労働法』の特徴と評価
『1冊だけで労働法』は、司法試験対策用の労働法の参考書。
本書とテイストの似ている参考書としては、『趣旨・規範ハンドブック』があります。
『趣旨・規範ハンドブック』も司法試験受験生に大変人気のある参考書でして、その労働法バージョンというところで、労働法選択者にはとても評判の高い書籍となっています。
実際に、ロースクール生の中での使用率も高いですし、司法試験本番の会場でも直前チェック用として使用している人もいるくらい人気の参考書です。
本書の構成としては、全体で3部構成になっています。
第1部が「合格答案作成ガイド」と題して、労働法の論文答案を書く上での注意点やポイントを簡単に10ページほどでまとめています。
第2部では、「趣旨・規範ハンドブック」と題して、労働法の各論点を分野別にまとめつつ、当該論点についての判例の規範や論証の流れ、条文の趣旨、用語の定義といった事項を掲載しています。
おそらく、司法試験受験生が本書を使用するとなると、この部分がメインとなります。
第3部では「過去問」を扱っています。平成18年~平成28年までの司法試験労働法科目の過去問を掲載し、その出題趣旨・採点実感・上位合格再現答案・答案講評をそれぞれの問題に載せています。
巻末には、「論点表」が載っていまして、労働法の論点を表でまとめて掲載し、司法試験の労働法科目で過去に出題された論点については、出題年度が記載されています。
労働法の参考書は数少なく、しかも本書は参考書&問題集が一体となっている構成になっているので、司法試験受験生の労働法選択者は是非とも使用してみるのをオススメします。
(司法試験合格者)
『1冊だけで労働法』の良いところ
それでは、ここからは『1冊だけで労働法』の良いところを具体的に紹介していきます。
各論点の判例の立場が一読で確認できる構成
『1冊だけで労働法』の一番の良いところは、労働法の各論点につき、判例の立場・見解を短時間で確認できる構成になっている点です。
もちろん、基本書等の書籍でも判例を端的に引用、紹介しているものはある(例えば『リーガルクエスト労働法』など)のですが、基本書はパッと見で簡単に判例を確認できるような構成にはなっていません。
本書の場合には、一覧表のような形で、労働法の論点と判例の規範・理由付けが記載されていますので、手軽に確認しやすい形式でまとめられているのが良い。
それに加え、論文答案で記述しやすいように、論証形式で書かれていますので、本書を確認すれば論述のイメージを掴めて、本番で全く答案を書くことができないという事態を避けることもできます。
主要科目の勉強もあり、勉強時間の限られている司法試験受験生にとっては、基本書よりも、本書の方が、試験に必要な情報だけを瞬時に確認できるので、効率的に学習できるメリットがあります。
関連記事:【書評】『リーガルクエスト労働法 第3版』〜簡潔で読みやすい基本書〜
論文試験で書くべき要件・定義を簡単に押さえられる
上記の点とも似通っていますが、『1冊だけで労働法』は判例の立場の他に、論文試験で答案に記載することが必須の要件や定義もまとめられています。
この点がかなり試験対策向けと評価できる点でして、基本的には、本書で押さえられる要件・定義等を暗記しておけば、論文試験で何を書けばよいのかわからない状態を防ぐことができます。
労働法の試験では、奇をてらったような問題が出題されることはそれほど多くなく、基本的な論点からの出題がほとんどですので、本書でまとめられている内容を最低限押さえておけば、相対評価で下に沈む答案になることは避けられると思われます。
特に、初~中級者くらいの人は、まずは本書で記載されている要件・定義等を押さえることから労働法の勉強を始めるのが良いかと思います。
司法試験の過去問と答案例も掲載されている
『1冊だけで労働法』は参考書の側面が強いのですが、それと共に、司法試験の過去問と答案例が掲載されていますので、問題集としての機能も備えている点が特徴的です。
平成18年~平成28年まで、合計11年分もの司法試験の過去問が掲載されていますので、本書の問題を解くだけでもかなりの演習量になります。
司法試験の労働法科目論文試験では、毎年、第1問と第2問の2つの問題が出題されていますので、本書に掲載されている問題の数は合計22問となります。
それぞれの問題につき、出題趣旨・採点実感・上位得点者の答案例・答案講評が載っていますので、「答案で何を書くべきか」から「どのように答案を書くべきか」まで確認できるようになっています。
労働法の参考書でありながら、問題演習の役割をこれほどまでに詰め込んでいるというのは非常に珍しいですね。
労働法では数少ない試験対策用の参考書
ここまで上げてきたように、『1冊だけで労働法』は司法試験の労働法科目を非常に意識した、試験対策用の参考書です。
・各論点の判例の立場を確認するのが容易
・要件、定義等を短時間で確認できる作り
・司法試験の過去問と答案例が掲載
など、多くの司法試験受験生が求める機能を1冊にまとめて掲載しているのはとても役に立ちます。
まさに、本書のタイトル通り『1冊だけで労働法』の基本知識を確認できる仕様なので、受験生には本書を入手するのをとてもおすすめできます。
他の主要科目(憲法、民法、刑法等)と比べて、選択科目である労働法は参考書の数自体も少なく、特に試験対策を意識して作られた書籍となると、ほとんどありません。
そんな労働法の参考書事情の中で、本書のような試験対策用の参考書は非常に貴重な存在だと思いますので、特に労働法に苦手意識のある人は手に入れておくと安心ですね。
『1冊だけで労働法』のイマイチなところ
ここからは、『1冊だけで労働法』のイマイチだと感じる部分も紹介していきたいと思います。
問題集としての機能は限定的
『1冊だけで労働法』は、前述のように、労働法の参考書としての機能と問題集としての機能を備えているという特徴があります。
しかし、問題集の機能については、かなり限定的なものにとどまります。
というのも、問題の数も多いし答案例も掲載されているのは素晴らしいですが、あくまで司法試験の過去問のみを抽出して作られているため、論点の網羅性には欠ける面が否めないのです。
本書で掲載されている司法試験の過去問が労働法の論点を網羅できているかと言われると、出題歴のない論点や本書で掲載されている範囲外で出題された論点などもありますので、網羅性はないかなぁと、、、
なので、労働法の問題演習に限れば、本書では少し不足してしまいますので、『労働法演習ノート』『事例演習労働法』等、問題量が多く網羅性のある他の問題集も使用するのがおすすめです。
関連記事:【書評】『労働法演習ノート』〜解答例付きが魅力な労働法問題集〜
関連記事:【書評】『事例演習労働法 第3版』〜司法試験受験生に定番の労働法問題集〜
あてはめの具体的要素を知るには情報不足
『1冊だけで労働法』の中で、非常に残念だと感じるところは、労働法の答案では非常に重要となるあてはめに使う具体的な事情が載っていない点です。
労働法の論文試験では、特にあてはめの詳細さが重要になるのですが、充実したあてはめを記述するには、あてはめに使う具体的な事実を頭に入れておく必要性があります。
しかし、本書では考慮要素が載っているにとどまり、その考慮要素に該当する具体的な事実が何かというところまで踏み込んだ記載がない部分も見受けられます。
この点は、問題演習等を通じて、自分で学んでいく必要があるとは思います。
『1冊だけで労働法』はこんな人にオススメ
・司法試験受験生(労働法選択者)
・ロースクール生
・労働法の参考書を探している人
・学部で労働法の授業を選択している人