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こんにちは。
今回は、難易度高めの刑法の問題集、『刑事実体法演習 (~理論と実務の架橋のための15講)』の評価や感想などを書評として書いていきたいと思います。
『刑事実体法演習』は『捜査法演習―理論と実務の架橋のための15講』と『刑事公判法演習: 理論と実務の架橋のための15講』の姉妹書を合わせた刑事演習書3部作の一つです。
『捜査法演習―理論と実務の架橋のための15講』と『刑事公判法演習: 理論と実務の架橋のための15講』は刑事訴訟法の問題集なのに対して、『刑事実体法演習 (~理論と実務の架橋のための15講)』は「実体法」ということで刑法の問題を取り扱っています。
個人的には刑法中級者以上の方にはすごくお勧めできる問題集だと思ったので、問題集選びに悩んでいる方は是非参考にしてください。
なお、過去の書評一覧は⬇︎こちら⬇︎にまとめていますので、ご覧ください。
【書評一覧】法律本の書評を総まとめ〜基本書・参考書・問題集・予備校本など〜
『刑事実体法演習』 立花書房出版
今回紹介するのは立花書房から出版されている『刑事実体法演習 (~理論と実務の架橋のための15講)』です!!
『刑事実体法演習』の評価と特徴
難易度:★★★★☆
試験向き度:★★★☆☆
おすすめ度:★★★★☆
問題数は15問(総論中心の問題が7問、各論中心の問題が8問)
問題数自体は少なめだけど問題の質は難易度高めで、噛み応えがあるというかじっくり考えたくなるような問題になっています。
なので、基本的にはロースクール生など、中級者以上向けの問題集だと思います。
『刑事実体法演習』の解説は非常に丁寧で、多数の学説を紹介している点や設問に対する当てはめまでしっかりと書かれている点が特徴的。
実務家が解説しているということから、解説の所々において、「実務においては〜〜」などの実務的な視点からの説明がされています。
本書の解説の流れは、問題提起➡︎学説の紹介➡︎判例の紹介➡︎設問に対する考え方、というのが基本的な流れです。
判例は素材判例や重要最高裁判例を中心に、細かい裁判例まで紹介している場合もあるので非常に参考になります。
解説もしっかりしてるし問題も複雑で難しめなので、全ての問題をじっくり解いていくととかなり鍛えられるかと思います。
ただ問題の数が少ないだけあって、刑法の試験的には重要な論点だが扱われていないものもあります。
(例えば、原因において自由な行為や中止犯など)
『刑事実体法演習』では、答案例は付いていませんが、その代わり?として犯罪事実記載例というのが解説の最後についています。
犯罪事実記載例は、答案とは異なり「被告人は、平成〇〇年〇〇月頃、▽▽において、△△をしたものである」というような、公訴事実記載のようなものです。
なので、試験の答案形式ではないですが、設問に対する考え方のまとめとして参考になるというところですね。
当てはめの考え方や設問に対する一つの解答として役に立ちますが、試験の答案作成の役に立てるのは難しいかもしれません。
『刑事実体法演習』の使用方法としては、個人的には自主ゼミ用の問題集として使うのが良いかと思います。
自主ゼミでよく使用されるのは『
刑法事例演習教材 第2版』だと思いますが、本書は問題のレベルも高いですし、本書を使用して自主ゼミで答案作成や問題検討をするのでも力をつけることができそうです。
もちろん、個人として答案作成をするのや単純に読むだけというのでも十分勉強になると思いますが、問題のレベルは高めなので自主ゼミに使うというのでも良いという感じです。
本書を読んだ感想としては、問題の質も高いし解説もしっかりしているので、長文問題を解きたい方には結構お勧めできる問題集というところです。
『刑事実体法演習』の良い点
・問題の質が高い
前述した通り、本書の問題は、長文・複雑・難易度高め、というのが特徴的です。
他の問題集よりも司法試験のレベルに近いのかなぁ、と感じましたね。
なので、ちょっとハードな問題を解きたい方にはすごくお勧めできます。
一方て、刑法の勉強を始めたばかりとか一通り勉強しただけというような、いわゆる初級者レベルの方にとっては、かなり難しいのではないかと思います。
そのような方はまずは基本知識をしっかり固めるのが優先されると思います。
・解説が丁寧で当てはめまでしっかり記載されている
法律の問題集は、学説や論点の解説はしっかりしているのに、当てはめの解説がすごく薄かったりすることもあるのですが、『刑事実体法演習』は各論点につき「設問の分析」という見出しで当てはめについても考え方がしっかりと示されています。
なので、この点では司法試験や予備試験のために学習している人にとっては、すごく役に立つ問題集だと思います。
『刑事実体法演習』のイマイチな点
・問題数が少ない
前述しましたが、『刑事実体法演習』の問題数は合計15問と問題集としてはかなり少ないです。
刑法は当てはめが重視される科目なので、刑法の学習では問題をたくさん解いていく必要があると思うのですが、その点を考えると本書だけでは問題の量が不足するかと思います。
・答案の書き方は学べない
答案例ではなく犯罪事実記載例が付いているので、試験の答案作成の役には立たないかもしれません。
刑法の答案の書き方から学びたい方は先述したような予備校本を使って、まずは答案の型を抑えるのが良いかもしれません。
その後で、本書を利用して答案を作成して刑法の力をつける方が効率的に学習できると思います。
・学説の紹介が細かすぎる
本書の解説は、丁寧なところはすごく高評価できるのですが、学説の紹介がすごく細かすぎるのではないかという部分もあります。
例えば、不真正不作為犯の作為義務の解説では、5つ6つという学説が紹介されています。
確かにそれぞれ見解は異なるのですが、それでもそこまで細かく学説を紹介するのはちょっと読むのが辛くなりますし試験対策としてはやりすぎ感があります。
なので、紹介されている学説全てを覚えるという努力は避けて、主要学説と判例だけ確認して、あとの学説は流し読み程度に留めるのが良いかと思います。
こんな人におすすめ
・ロースクール生
・刑法中級者以上
・長めの問題を解きたい人
・自主ゼミ用の問題集を探している人
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